音・楽

 連休の予定は今日の室内楽コンサートの練習だけです。私は2つのグループに参加していて、今日のはオーボエの後輩さんと後輩くんとのトリオ。約1年ぶりにアングレを吹きます(焦)。昨年1か月ほど先生にお貸しして吹いてもらったせいか、新世界を練習していたときよりずっと吹きやすく感じます(笑)。楽器そのものが鳴り始めたのでしょうね。
 まるで学校の先生のように、感情的ではなく、とても冷静に、言葉を選んでフラットに伝えてくれたけど、後輩くんはかなり真剣に腹が立っていただろうなと思った。レッスンで先生にもよく言われることだったけど、アマチュアの、それも仲間に言われると重みが全然違って、純粋にあぁそうだよなと反省した。この曲が好きなのか、どんなイメージを持っているのか、そのイメージを聴いている人にわかってもらうためにはどうすればいいか、そもそも演奏していて楽しいのか、本当にこのアンサンブルをやりたくてやっているのか。とても静かで青い怒りが見えた。
 アマチュアにとって大事なのは技術より気持ちだと、昔はよく思っていました。大学のオケ部は弱小もいいところで、人もいないし、経験も少ないし、技術面も悲惨で、今聴くと笑ってしまうところもあるけど、それでも聴くに堪えない音楽ではなかった。みんなでわいわい、ときには意見がぶつかったり、人やお金がないことに苦労しながらも、仲良く楽しく、そして何よりも好きでやってたから。正直なところ、あることがきっかけでここ2年ほど、吹くのが楽しくないときもあって、ときどき「少し離れてみた方がいいのかな」と思ったりしていたので、後輩くんの言葉はガツーンと心に響きました。後輩さんも何か感じたことがあったんだと思う。その後で通した演奏は音も雰囲気も全然違いました。後輩くんもすごいけど、気持ちって本当に恐ろしい。
 演奏の基本軸はやっぱり「楽しく」ってことなんだなと思いました。上手な演奏といい演奏が必ずしも一致しないように、下手な演奏が悪い演奏でもないのだと思う。仕事と同じで、オーボエを吹くときもずっと爪先立ちをしているような感覚を持っていました。オケが大きくなって、上手な人がたくさん入ってきて、置いて行かれないようにしなくちゃって思っていた。頭ではそういうことじゃないんだ、私には私なりのペースもあるし、下手でも良さはあるはずだしって思っているんだけど、心の底辺でずっと焦りを感じていたんだと思います。
 でも後輩くんはその「上手な人」だっただけに、余計心に響きました。思えば練習してても、技術的な指摘はほとんどしないんですよね。イメージだったり、心持ちだったり、そういうことが主。本当は技術的な指摘ももっとしたいところだろうけど、言ってもすぐ出来るとは思ってないはずで(笑)、控えてくれているのでしょう。でも、それでも、好きだとか楽しいという気持ちがあれば、いい演奏になると、ちゃんとわかっているのですね。確かに今みたいな気持ちで吹いているのは、一緒にやる人たちにもお客様にも失礼だなって思いました。
 あるきっかけによってオーボエとか演奏することへ生まれた迷いみたいなものは、私自身の問題です。技術じゃなく心の問題。少しずつ乗り越えてはいます。でもまだ完全に吹っ切れてはいないし、焦りみたいなものもすぐ消えるとは思いません。ただ続けることを選んでる、それは紛れもない事実で、止めたくないと思っているということは、やっぱり好きだからなのだと思う。今回もコンサートに参加するにあたってはかなり迷ったんだけど、参加すると決めたからには楽しくいい演奏がしたいし、聴きに来てくれる人にもいい曲だと思ってもらいたい。いつも思うことだけど、本当に人に恵まれた人生を送っているなと、感謝しました。